16-4

この店のシート配置は、ショートボックス型。


2人用のシートが壁で仕切られ、半個室状態のブースがいくつも存在する。

壁は座った時の顔辺りまではあるから、首から下は周りから見えない様になっている。



店の端っこの使っていない席で、2人の女の子達が待機している。

混んで来たら、ここにもお客さんが座ることになるみたいだ。


マネージャーが軽く紹介してくれたので、私は女の子達に頭を下げると思い切って聞いてみた。



『あの…ここって、触らせるのは胸だけなんですよね?』


「あ~…表向きはね…でも指名がなかなか取れんと、下も解禁しろ的なことをマネージャーが遠回しに言ってきたりする」



そして、別の子も言った。

店内のBGMがやや大きめのせいか、女の子達の声もちょっと大きい。



「指名欲しくてコソコソやっとう子おるよね」


「おるおる!てかこないだ更衣室でアオイちゃんが、アソコに氷入れられてどうのこうの言っとったよね!」


「あの子、声でかいもんね」


「ほんとそれ!まぁそんな感じやけん…今日体入やろ?ヘルプばっかやと思うけん、今日はそこまでガンガンいかんで大丈夫やないかいな?」


『そうですか…』



アソコに氷、って…



お店は2時まで。

風営法の関係らしく、待遇の説明の時に見せてもらった雑誌には、20時~LASTって書いてあったけど。


あと2時間…お客さんにつかずに終わるわけがない。

どこか祈る様な気持ちで座っていたら、マネージャーが私を呼びに来た…



「ユリさん、ヘルプ行ってみましょうか」


『あ…はい…』


「名刺持ってますか?」


『はい』


「密着度がウリのお店やけん、お客さんの耳元でなるべく話す様にしてね」


『はい…』


「常連さんにつけるけん。今日入店って僕が最初に言うんで、安心して下さい」


『はい…』



行ってらっしゃ~いと手を振ってくれた、待機の女の子達。

私も手を振り返し、ボーイについてお客さんの席へ向かう。



「本日入店のユリさんです。お手柔らかにお願いします」



ボーイさんが私を紹介する。

頭を下げて自己紹介し、名刺を渡して席についた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る