16-3

案内された更衣室で1人になると、私は手渡された袋をバリバリと開封した。

何の変哲もない、新品の男物の白いワイシャツLサイズ。


服を脱いでブラを外して、パリパリのそのワイシャツに袖を通した。

お尻がちょうど隠れるくらいの丈。


履いていたデニムを脱いでロッカーにしまい、借り物のミュールを履いた。



『着替えました…』



更衣室を出て、マネージャーに声をかけた。



「…ボタンは3つ目くらいまでは開けとって」



マネージャーに言われ、私はボタンを外した。


そのままフロントに行くと、マネージャーが



「この子今日体入(体験入店)ね!ラストまで。ユリさんです」



と声をかけた。

そして今度は、フロント係に引き渡し。



「お客さんについたら、まず名前を言って名刺渡して。今日はヘルプがほとんどやと思うけん、まずは仕事の流れをつかんで下さい」


『はい』


「基本お客さんの左側に座る様にして。しばらく話したら、お客さんに聞いてから片脚をお客さんに掛けて下さい。お客さんの左脚に、ユリさんの右脚を乗せる感じで」


『はい』


「ダウンタイムになったら照明が今より更に暗くなるけん、そうなったらお客さんの膝の上に乗って下さい。向かい合わせで」


『はい…』


「シャイなお客さんもおるけん、自分からボタン外したりして出来ればリードして下さい。内容はもう聞いとうと思うけど、キスとお触りはありです」


『…はい……』


「ヌキ行為は禁止なのでしないで下さい」


『はい…』


「おしぼり、灰皿、注文などはボーイさんに言って下さい。席を離れずに手を挙げてもらえば、ボーイさんが席まで行きます」


『解りました』


「時間になったらボーイさんが来るので、延長するかしないか聞いて、お帰りの場合は入口までお見送りして下さい。他、質問ありますか?」


『ドリンクバックがあるって聞いたんですが…』


「あ!ドリンクはお客さんからOK出たら、ボーイさんに頼んで下さい」


『はい』


「じゃあ、お客さんつくことになったら呼びに来るので、しばらくここで待っとって下さい。解らないことがあったら、その都度遠慮なく聞いて下さい」


『はい…』



そして私を待機席に残し、フロント係は足早に去って行った。

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