16-2

講習という名目でお口で奉仕し、ランパブとセクキャバの違いの説明を受けたその後。


私は両者から、自分が働く店をその場で選んだ。

そして、これから働くことを前提でそのまま体験入店という流れになった。



スカウトの男から、店のマネージャーらしき男に引き渡された私。


給料の説明と、サービスの簡単な流れを聞いた後。

斎藤工を青白くした様な風貌のそのマネージャーが、私に言った。



「じゃあ、源氏名何にしよっか…ユリとかは?」



あんたが決めるんかい。

そう思ったけど『それでいいです』と答えた。

ニセモノの名前なんて、別に何でもいい。



「これに、そうやなぁ…5~6枚くらい名前書いとって。ちゃんとしたやつ出来るまでは、それで」



さっき見かけたのと同じ、空の名刺。

店名と住所などが印字されていて、真ん中あたりは空欄になっている。


言われた通り、空欄にペンで名前を書いた。

ユリ、か…



「何か小さめのポーチかバッグかなんか持っとる?」


『メイクポーチの中身出せば、何とか…』


「じゃあそれに名刺とあと簡単な化粧道具とか入れて、席つく時はそれ持って移動して。あとお客さんの前でタバコは吸えんけん」



私はタバコは吸わないから、問題ない。



『はい…』


「あとは靴やね。さすがにそれじゃダメやけん…」



マネージャーの視線の先には、スニーカーを履いた私の足。



「とりあえず今日はこれ履いて。気になるならそこにウエットティッシュあるけん」


『はい…』


「じゃあ着替えたら呼んで。これロッカーの鍵ね。貴重品は出来ればフロントに預けて」



そう言ってマネージャーは、更衣室を指差した。



『はい…』



バタン。




ドアの音が、妙に響いた。

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