16. セクキャバ嬢

16-1

翌日、目覚めたのはお昼過ぎだった。

少し飲み過ぎたかな…頭が痛い。


私はバッグの中から、封筒を取り出した。

封筒の中には、8枚の千円札。

嘘みたいだ。



昨夜は結局、体験入店という形で2時間ほど働いた。


体験入店は、時給4000円。

今日からは、3500円からのスタート。

ドリンクや指名など、売上によって増えていくらしい。


衣装のクリーニング代や寮代は、ここから天引される。



そして、私はワンルームマンションの1部屋をあてがわれた。


玄関を開けたら、突き当たりに部屋。

通路を挟んで、右手がユニットバス。

左手は、小さなキッチン。


吊棚と小さなシンク、1口のIHコンロ。

部屋に入ると、左の手前には小さな冷蔵庫。


その奥にはテレビ台と、小さめの液晶テレビまである。

部屋の右奥には、シングルベッド。



布団は、昨夜帰って来る時に男性スタッフが運び込んでくれた。

ちゃんと、新品。


ベッドの足側には、3段の長い引き出し。

その上に、観音開きのクローゼット。



すぐに暮らせる様になっている。

そう男性スタッフが言ってたけど、本当にその通りだった。

至れり尽くせり過ぎて、気味が悪くさえ感じてしまう。



寮だけど、とりあえずは独り暮らし開始。


不安はないわけではなかったけど、仕事がすぐに決まり何処かスッキリした気分もあった。

こんな華やかな街に、自分を雇ってくれる店があるのか心配だったし…


これからは、自分のペースで生活出来る。



…そのためには、仕事を頑張らなきゃいけないんだけど。

寮に入っている子は、週4~5日出勤しなきゃならない。


昨夜のことを思い出し、私は少し憂鬱になった。






……あれからスカウト男は、両方の店にとりあえず案内すると言って来た。


だけど私はあの場でもう、どちらで働くかを決めたんだ…

住む家すら無い私には、迷っている時間なんて無かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る