13-6

『いやあの…お母さんがね、お見合いさせたいみたいっちゃん、私に』


「は?何それ」


『お母さんの紹介する人と結婚して欲しいみたいやけん…それで…』


「お前何ば言うとるとや?」


『ずっと離れとったけん、親孝行したいっちゃん…』


「やから俺とは別れたいと?会ったことあると?そいつと」


『ない…』


「中学から付き合っとった俺より、会ったことない奴をとるったい…」


『ごめん…』


「ごめんやなかろ~?あ~もう…意味わからん…もういいわ…」


『…』


「いつ行くん?北海道」


『え?ああ…明日…』


「急やな」



本当はこの後すぐ、電車に乗る。

だけどみんなに話が行って見送り云々ってことになるのを避けるために、微妙にずらした。




「みんなは知っとるん?」


『まだ』



悠人くんはしばらく黙っていたけど、やがて立ち上がった。



「もういいやろ。分かったけん帰って」



私も、のろのろと立ち上がった。



『あ、これ…』



差し出したのは、あのプリペイド携帯。


新しい携帯を自分で契約した時に、チャージ分は使い切った。

でもまだ期限があるから、受信は出来る。



「返されても困るけん」


『でも…』



悠人くんは私の手からプリペイド携帯をひったくり、その辺に乱暴に投げ捨てた。



「これでいいやろ。はい。バイバイ」


『ごめん…』



私は、1人で悠人くんの部屋を出た。

これまでは送ってくれたから、これで本当に終わったんだなって実感した。


そして彼とは、二度と会うことはなかった。

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