13-5

「嘘やろ?本当はなんか他に理由があるっちゃろ?ちゃんと理由聞くまで別れんけん」



ああ…やっぱり見抜かれた。

用意して来た嘘を使う時が来た。



『お母さんとね、また一緒に住める様になったっちゃんね…』


「え!よかったやん!」



悠人くんには、母とは事情があって別々に暮らしているとだけ話していた。



『お母さんね、北海道でお店やっとってね。それを私に手伝って欲しいけん、北海道で一緒に暮らそうって』


「北海道?!」


『うん…』



別に、北海道でなくてもよかった。

ここから一番遠いであろう地名を、持ち出しただけ。

外国だとリアリティに欠けるから、国内で。



「で?遠距離になるけん別れようって?」


『うん…』


「…バカか」


『………』


「そんな理由じゃ別れんよ…しょうがないやん。しょっちゅうは会えんくなるけど、別に変わらんやん…」



悠人くんなら、そう言う気がした。

そんなことくらいでって、言うと思ってた…


やっぱり、切り札を出さなきゃか…



『うん、でもそのお店がね、お酒出すお店ったい…悠人くんが嫌いな…』


「…スナックとか?」


『多分…横についてお酒ついだり、タバコに火つけたりするって言うとった』


「う~ん…しょうがないやん…家の手伝いやろ?別にその店を、いつか里菜が継ぐとかじゃないっちゃろ?」


『うん…まぁ…』



予想外の答えに、私は戸惑った。

日頃からあれだけ水商売を嫌がっていたから、手伝うのやめるか別れるか…ってなると思っていた。


それだけ、別れたくないって思ってくれてたんだな…



こうなったらもう借金のことだけ隠して、あとは今まで通り…ってすることも出来たかもしれない。

どうせ今までだって、隠して来たことはたくさんあったんだから。


だけど数ヶ月前からあれこれ悩んで考えて決めたことだったからか、私は逆に意固地になってしまった。



私は必死で、別れる理由を考えた。

一緒にいるわけにはいかない…それだけで頭がかちかちになっていた。


そして思いついた、幼稚な嘘。

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