13-4

「なんかゆっくり会うの久々やな~」



悠人くんの部屋に入って座ると、彼がそう言った。



『うん…』


「なんかあったと?」


『うん…』


「何?」



どう話すかは用意して来たはずなのに、言葉が出ない。



「別れ話とか?」



悠人くんの言葉に、私は少しだけ顔を上げた。



『……ん…』


「なんで?俺なんかした?」



私は、黙って首を横に振った。



「なんか最近会えんかったけん、俺に会いたくない理由でもあるんかなって思いよった」



違うよ。

単純に、忙しかっただけ。


でも事情を全く知らない悠人くんからしたら、今まで会えてた曜日に急に会えなくなったり、今まで電話に出られていた時間に出られなかったり…

おかしいなと思う要素は、いくつもあっただろうと思う。



「理由は何やと?」


『………』


「冷めたとか?」



私は、仕方なく頷いた。


冷めてなんかいない。

むしろ、好きだから、だから別れるんだよ…



借金まみれになったなんて、絶対に言えない。

それを返すために、彼の大嫌いな世界に飛び込もうとしてるなんて絶対言えない。


私の生い立ちなんて、絶対知られたくない。



きちんと全部話すという選択肢は、最初から頭になかった。


大して可愛くもない、地味な私とこんなに長く一緒にいてくれた。

その上マイナスな荷物を背負ってしまったら、もう一緒にいてもらうわけにはいかない。



小説の読み過ぎだったのかな。


好きだけど、相手の幸せを願って身を引くことが美しいって思ってた。

泣いて縋ってまで、一緒にいてもらうべきではないって思った。



本音を言えば、当然ずっと一緒にいたい。

だけどこうなった以上は、もうだめだ…

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