13-3
悠人くんの家を通り過ぎ、まずは駅に向かった。
まずは電話しなきゃ…
駅前のベンチで携帯を取り出して、彼に電話をかけた。
仕事とバイトと金策に忙しくて、しばらくまともに会えていない。
きちんと話をしてから…と思う反面、もうこのまま会わずに離れたい気持ちもあった。
会ってしまったら、決意が鈍る気がしたから…
出て欲しい様な、出て欲しくない様な…祈る様な気持ち。
そして、コール数回で彼の声が聞こえた。
「もしもし」
『あ…もしもし悠人くん?』
「うん、どうしたと?」
『今からちょっと会えん?』
「いいけど、何処行けばいい?」
『ゆっくり話出来るとこがいいんやけど…』
「じゃあうち来る?」
『行って大丈夫やと?』
「いいよ」
『じゃあ10分くらいで行くけん』
「はーい」
携帯をポケットにしまいかけて、時刻を見た。
早めに切り上げなきゃな…
電車、なくなっちゃう。
そう思いながらも、ベンチに座ったままなかなか立ち上がれない。
私はハサミと、封筒を取り出した。
封筒の中には、私のクレジットカードとサラ金のカード。
その2枚を、ハサミで勢いよく切り刻んだ。
随分バラバラにしてからその破片達を封筒に戻し、封筒を小さく折り畳んでレジ袋でくるんだ。
やっとの思いで立ち上がり、ロッカーにキャリーバッグを預ける。
大きなロッカー、空いててよかった…
身軽になった私は、重い足取りで悠人くんの家に向かった。
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