13-2

しばらくすると、叔母が追ってきた。

引き留めてくれると、一瞬でも思った私は馬鹿だ。



「里菜ちゃん、何処行くんね?」


『…彼氏のとこ』


「彼氏のとこにずっとおるんね?」


『わからん…』


「連絡取れんと困るけん…支払いが…」


『私もうお金ないけん…』


「彼氏にちょっと借りられんとね?」



私は顔を上げた。



「子供が出来たから、おろすとか何とか言うて…」






…このババアは、狂ってる。

こんな人でなし、小説の中にしか出て来ないものだと思ってた。



『別れるつもりやけん、無理』


「無理ね…そうね…言うてみただけやけん…連絡ばちゃんとしてね?」



言うてみただけ、って…

私は返事をせずに叔母に背を向け、歩き出した。

叔母がまだ私を見ているのかすら、わからなかった。



暗い夜道に、キャリーバッグを引きずる音が響く。


友達とお揃いで買った服や靴、誕生日にもらったいろんなプレゼント。

決して多くはないけど、大事なメイク用品たち。

プリクラとか、細々したもの。


一緒に連れて行きたいものは、ほぼこの中に押し込んだ。

でも…一番連れて行きたいものを置いて、私はこの町を出る。

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