12-4
その夜は、叔母もおとなしく家にいた。
今夜には叔父に話すと私が宣言したから、気になってしょうがなかったんだろう。
珍しく紗弥加抜きの3人が揃い、夕食をとったその後。
しばらくして2階に上がろうとする叔父を、私は呼び止めた。
『叔父さん、ちょっと待って…』
叔父には滅多に自分から話しかけないので、叔父は幾分驚いた顔で振り返った。
『私と叔母さんから、ちょっと話があるとよね…』
私は、俯いている叔母を見ながら続けた。
『叔母さんの借金のことは、もう聞いとると思うっちゃけど…』
「うん…」
『その借金なんやけど、もう結構返済が追いついてない状況なんは聞いとるとよね…?』
「うん」
『それでね、私が…何て言ったらいいんやろ…代わりに…』
自分が叔母に頼まれて借金をし、そちらも返済に行き詰まってる状況。
ブランド物が多数あったのを、整理して売りに行ったこと。
要は叔父に、借金を銀行か何処かでまとめてもらいたいこと。
話さなきゃいけないことは、たんまりある。
いったん頭の中で整理しようと、私が言葉を止めた時だった。
「代わりにね、払ってやったとよ。私が里菜の借金を」
叔母が、そう言った。
「里菜の借金?」
最初は話にあまり興味なさげにテレビをチラチラ見ていた叔父が、リモコンでテレビを消して叔母の方を見た。
「里菜がね…うちの店手伝うのに、衣装が欲しいけんって…叔母さんに恥かかせたくないけん、ちゃんとした格好がしたいって、たくさん衣装を買うたとよ。借金までして」
「衣装はお前が買うてやってたんやないとか?そのために借金したって言っとったやろ」
「…里菜が自分で借金してまで買うてたとよ。で、それが払えんごとなって、払ってやるために私が借金したとよ…」
私は2人のやり取りを、信じられない思いで見ていた。
叔母は、全く逆の説明を叔父にしたのだ。
叔母の浪費による借金を払うために、私が代わりに借金をしたのに…
しかも嘘が後ろめたいのか、私がまるで叔母のために借金した様な妙な庇い方をした言い方。
言葉が出ない。
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