11-3
それから数日後だったか…
私は叔母に連れられて、地元からは少し離れた場所に来ていた。
ついて来てくれるだけでいいから…と。
週末の昼間に、珍しい。
駅前の横断歩道を渡り、裏路地に入っていく。
そして、とある雑居ビルの前で叔母が立ち止まった。
「あのね…お金を借りて欲しいとよ」
叔母の視線の先には、テレビCMで名前は誰でも知っているであろう無人契約機があった。
『え…』
「お金がね、もう足りんとよ。私じゃ借りられんとよ…お願い…いくらでもいいけん…返済は叔母さんがちゃんとするけん…」
私が現金を貸すんじゃ駄目なの?と一瞬思ったけど、私は口をつぐんだ。
多分叔母の予想してる以上に、私は貯金をしてる。
それを知られたくなかった。
あれは、悠人くんと暮らすためのお金…出来れば手をつけたくない。
『今お金がないとに、返済とか出来ると…?』
「今、ないだけやけん…」
言っている意味が、よく分からない。
私が黙っていると、叔母は人通りがないのをいいことに私に深々と頭を下げて来た。
「返しますから…お願いします」
こんな所で、頭なんて下げないで欲しい。
私は、思わず周りを見回した。
サラ金なんて正直、いいイメージ皆無。
何と言えば、角を立てずに断れるだろう…それだけを必死に考えていた。
「里菜ちゃん」
黙っている私に、叔母が言った。
「あんたが冷たい風呂に毎日入って、ひとりでお弁当食べとったのを、叔母ちゃん助けてあげたやないね…今度はあんたが私を助けてくれたってよかやないね…」
何も言い返せなかった。
私が叔母のために借金したことは、叔父には内緒。
土下座しそうな勢いで、叔母に頼み込まれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます