11-2

春になり、私は20歳になった。


無事に自分名義の携帯も契約出来て、友達が待ってましたとばかりにあれこれ教えてくれる。


あっという間にインターネットを覚え、SNSを始めた。

これがやりたかった…!



この頃になると、叔母は毎晩家に居る様になった。

その代わり昼間は不在が多かったから、店の営業を昼間に切り替えたのかな?くらいに思っていた。


私が知ったのはもう少し後だったけど、この頃にはおそらくもう店は潰れていたんだろう…



その夜、飲み物を取りに階下に降りた時だったか…叔母と叔父が話しているのが、ドアの外まで漏れ聞こえて来た。



「でももう払わんとどうしようもないんよ…」


「待ってもらえんのか?」


「もうだいぶ待ってもらっとるとよ…」


「いつからなんか」


「去年の秋」


「そんなに前?!」


「もう私の名義じゃどこも貸してくれんとよ…」


「店の借金だけやないんか?」


「カードの支払いとかいっぱいあって…」


「何に使ったんか、そんなに」


「お店に出るのに綺麗にしとかないかんやろ?あとは里菜のこともそうやし…」



唐突に自分の名前が出たから、私はビックリした。


叔母の話だと、私を自分の店に立たせるために衣装や靴などを準備してやった。

そのためにお金がかかった。

店の借金の他にそれに使ったカードの支払いがあり、もう首が回らないということ。



衣装なんて、買ってもらったことがない。


子供の頃は、叔母の家に引き取られる前から服は紗弥加のお古がほとんどだった。

それを嫌だと思ったことはないけど…


ある程度大きくなってからは何枚か服を買ってもらったことはあるけど、支払いが大変になるほど高い物なんて買ってもらった記憶はない。



本当は単に、叔母が浪費して背負った借金に違いない。


そういえば、店ではいつ見ても違う服を着ていた気がする。

高い安いはこの頃の私には分からなかったけど、もしかしたら全てブランド物だったのかもしれない。



そういえば、私のカードも返してもらってない。

請求書は来てないみたいだから、まだおそらく使ってはいないんだろうけど、そのうち使うに違いない。


どうにかして、取り返さなくてはならない。



やがて叔父の声は大きくなり、叔母は次第に涙声になっていった。

私はそのまま居間には行かず、部屋に引き返した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る