10-5

19歳になって、初めて携帯を持った。

私より一足先に20歳になった悠人くんが、プレゼントしてくれた。


とはいっても、他人名義で契約した携帯を持つのにどうしても抵抗があったから、プリペイド携帯にした。

それでも他人名義には変わりないけど、プリペイドだとなんとなく少しだけ気楽だったから。


契約だけしてもらって、お金は私が払った。

知り合いが働いてるとかで、少し安くなったみたい。



他の会社の携帯ともメール出来るものだったから、友達ともすぐ連絡先を交換した。

男の子とはダメって言われたけど…


通話料が高いから、なるべく受信メインで。

みんなが使ってる携帯と比べたら、なんとなく型が古い様な…


それでも、めちゃくちゃ嬉しかった。

私が、自分で携帯を契約出来る様になるまでの辛抱。


カードを一定期間チャージしなかったら、自動的に解約になるらしい。



結局は1年くらいしか使わないことになるから、無駄な出費かな?とも考えた。


だけど、欲しくて欲しくてもう我慢出来なかった。

欲しい物を聞かれたら、携帯しか思い浮かばないくらいに。



普段節約してるんだ。

ちょっとくらいいいだろう。

みんな持ってるんだし、こんなの今時普通。

贅沢でもなんでもない。


むしろこの歳で初携帯なんて、遅すぎるくらいだし!

よくここまで我慢したよね、私!

やっと人並みに近付けた!と思ってた。



今思えば、親には捨てられたけど友達や彼氏には恵まれていた。


ずっとこの子達と仲良くしていこうって思ってた。

婆さんになったら、みんなで温泉旅行行こう!とか話したりして。


ずっと悠人くんと、一緒に居られると思ってた。

いつか結婚したら、こんな家に住みたいね!とか話したりして。


この頃が10代で一番、幸せだったかもしれない。



でも幸せな記憶は、ここでプツリと途切れてしまう。

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