10-4

18の夏、終わり頃。

約束通り無事、工場の契約社員になった。

契約は、半年ごとの更新らしい。


もともと、ルーチンワークはあまり苦ではない方だった。

だから続けられたのかな?



ここ最近は叔母の店も暇で、早上がりが増えて来ていた。

だから、身体も以前よりは随分楽。


自由な時間も増えたし、悠人くんとも上手くいってる。

あと少し頑張れば、家を出れそう。



初めて手にする、自分の保険証。

あまりにも嬉しくて、手にした日は珍しく自分から叔母に見せた。


叔母も「これで立派な社会人やね」って喜んでくれた。

認めてもらえたんだなって思って、嬉しかった。



すぐに携帯を契約しに行ったら、未成年は親の同意書がないと契約出来ないと言われた。

まずは何よりも携帯が欲しかった私は、心底ガッカリした。


だけど携帯を持ったことを叔母に知られたくないから、お願いして契約することはしなかった。



そして、叔母の勧めでクレジットカードを作った。

これから先は、持っていた方がいいからと。


カードなんてちょっと怖いな…と最初は思ったけど、持っているだけならと思って作ることにした。

叔母はキャッシング枠が少ないと不服そうだったけど、使うつもりのない私にはどうでもいいこと。


それよりも、携帯をこっそり持てなかったことの方が私にとっては大問題だった。



遊び歩いてたわけじゃないから、私がいるのは職場か自宅か叔母の店。

何処かに行けば捕まる。


だけど、仕事先にまで来たら悠人くんの印象が悪くなるだのとあれこれ理由をつけて、悠人くんが店に来ることは断固拒否していた。

それに、自宅には夜は叔父がいるからゆっくり電話出来ない。


待ち合わせも時々不便だったし、やっぱり自由に悠人くんや友達と連絡を取りたかった。

他はみんな持ってるんだもん…



契約社員になってからは、仕事を任される範囲が少し増えた。

毎日充実していたと思う。


何も知らない私は、このままずっとここで働けるんだと思ってた。

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