09-6

職場は、電車で3駅のところ。


交通費は実費支給。

節約のために、晴れた日はなるべく自転車で通勤した。



時々現場の様子を見にやって来る人は、みんな男性。

工場内で働いているのは年配の女性がほとんどで、私くらいの若い女の子は見当たらない。


中卒だし、だらしなく見えるかな。

ワケありっぽく見えるかな。

冷たくあたられるかも。


そんな風に心配していたけど、予想に反してみんな娘の様に可愛がってくれた。



ここは地元よりは、結構都会。

それでもまだまだ田舎町ではあったけど、私からしたら随分華やいだ街に見える。


地元みたいに、何処行っても知った顔ばかり…というのがない。

更に同年代の子がいないのが、私にとっては逆に気楽ですらあった。



工場でのバイトを始めたら、叔母の店からのお給料は出なくなってしまった。

もともとはお給料というより、お手伝いのお駄賃という感じだったんだけど…


それでも、そのお駄賃だけで過ごしていた時期からしたら、随分自由になるお金が増えた。

食費として半分を叔母に渡したら、残りは全部自分のお小遣い。


最初は正直、全額預かる!なんて言われるんじゃないかと心配していたから、本当に安心した。



中学時代からの友人に教えてもらって、安いお店で少しずつ揃えた。

服、サンダル、バッグ、メイク用具…


眉を整えて、メイクの仕方も教えてもらった。

モッサリ重かった髪も軽くしてもらい、色も少しだけ明るくした。

仕事上、手にネイルは出来なかったけど、ペディキュアだけで我慢した。



今まであまり興味がなかった、オシャレ。

いや…興味はあったけど、諦めていたと言った方が正しいのかな。


周りからしたら随分と遅咲きだったけど、少しずつ少しずつ垢抜けていく自分。



自転車通勤とダブルワークでクタクタだったけど、毎日楽しかった。

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