09-5

梅雨が終わり、16の夏。

やっと、仕事が決まった。


叔母がついに、折れてくれた。



決まったのは、工場のライン作業のバイトだった。

私のやる仕事は、決まったおかずを決まった場所に決まった量だけひたすら詰めて行く仕事。


正社員での雇用は、やっぱり断られた。



だけど、2年。

2年頑張って働けたら、契約社員登用を考えると言ってもらえたのだ。


最初は叔母は渋ったけど、結局は了承してくれた。



2年働けば、契約社員。

契約社員になれば、社会保険がつく。

年に2回、少しだけ賞与も出るらしい。


会社の指示で、ゆうちょに口座を作った。

何だかワクワクした。



携帯は相変わらず、持たせてもらえない。

1人で契約しようにも、未成年の私には必要な書類が揃えられない。


だけど契約社員になれば、保険証がもらえる。

携帯が契約出来る!



契約社員になれたら、ボーナスは少しだけど全部貯金しよう。


ずっと近所の知り合いの理髪店で切ってもらっていた髪も、本当は美容院で綺麗にしたい。

服だって靴だって、自分の好きなものを選んで買いたい。


それが全部、出来る様になるんだ。



ずっとずっと、謎だった。

悠人くんはなんで、こんな芋臭くて冴えない私と付き合ってくれてるんだろう?


あんな始まりだったけど、なんだかんだでもう1年以上付き合ってる。

悠人くんのためにも、もっと可愛くなりたい。



周りの子からしたら私は地味でオシャレでもなくて、パッと見はおとなしめの従順な子。

だからこそ逆に目立ってしまってたかもしれないと思うくらい、本当に冴えない16歳だった。


オシャレをしたい変わりたいと思っても、お小遣いが足りなかったしきっかけもなかった。


特に中学生の後半は、本当に忙しかったから。



これから自分がどんどん変われる気がして、珍しくやる気になっていた。


早く大人になりたい。

自立したい。

頑張らなきゃ。


初めて、漠然とではなく明確な目標を立てて進み始めたかに見えた。

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