09-3

春休み、仕事探し。


飲食店、スーパー、警備、工場、現場系、販売など…中卒だと、とことん落とされた。

現場系など体力の要る仕事は、私の見た目のせいなのか、体力に不安があると言って落とされた。


バイトなら…というところはいくつかあったけど、叔母がそれを許さなかった。



住み込みで新聞配達なども考えたけど、先々を考えたらおとなしく家にいてお金を貯めた方がいいと悠人くんが言った。

私もそう思ったから、おとなしく叔母の言うことを聞いていた。


1つ年上の、叔母の実子の紗弥加は、知り合いのカフェでアルバイト。

羨ましかった。



多分叔母はこのままずっと、店を手伝って欲しかったんじゃないかなと思う。

だけど私は、ずっとあの店で働くのは嫌だった。


何より悠人くんが水商売を毛嫌いしていたから、出来るだけ早く遠ざかりたかったのだ。

最初はイタリア料理店として始まった店だからどうにか誤魔化せていたけど、一歩入ればスナックと変わらない店になってしまっていることは、悠人くんには黙っていた。



やりたいこととか将来の夢なんて、相変わらず何もなかった。


ただ、ここを早く出て悠人くんと一緒に住みたい。

もっと自由に、友達と遊びたい。

それだけ。


確固たるものがないから、周りの意見に流されてばかり。



息苦しさは常に感じていたけど、だからって何もなくいきなり飛び出してしまったらきっともっと苦しい生活が待ってる。

それだけは、子供ながらに分かっていた。


こういうところは、私は冷静なのだ…



この時に思い切って飛び出していたら、もっと違う人生が待っていたのかな。


今となっては後悔はしていないけど、結局はお金がないことを言い訳にしてぬるま湯に浸かっていたなと思う。

出て行きたいなんて言いながら、この時の私に本当に足りなかったのはお金じゃなくて覚悟だ。

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