09-2

そして、仕事が見つからないまま迎えた卒業式。


感動もしなかったし、特別淋しさもなかった。

数少ない仲良しの他クラスの友達とは、これから先も変わらず会えるだろう。


卒業生の友達が増えていた私にとって、友達と関わる場所は、学校である必要がなかった。

だから私には、学校に対して特別な思い入れがなかったのだ。



クラスには2人ほど仲良くしている子はいたけど、それはあくまでも表向き。

ずるい私は、学校生活が不便にならない程度にはクラスにも仲良しを作っていた。


とはいってもそれは、休み時間毎にトイレに一緒に行くだけの様な仲。

卒業してもずっと仲良くしていきたい気持ちは、特になかった。



表向きの友達と、何枚か写真を撮った。

2人共、すっかり目を腫らしていた。

その後2人は、出席していた親とも写真を撮っていたと思う。


私は担任に挨拶して、1人で校門を出た。






卒業式には、誰も来なかった。

担任には、叔父も叔母もどうしてもはずせない仕事があると説明した。


本当はきっと叔父は、卒業式が今日ということすら知らなかったと思う。

そして叔母は、卒業までに私の就職が決まらなかったから、恥ずかしくて行きたくないと言っていた。



それでよかった。


私は私を縛るものから、1つ解放されたと思っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る