08-2

連れ戻された私を待っていたもの。


それはこれまでと同じ日常、プラスアルファ。

…プラスなのか、マイナスなのか。



朝起きて、朝食と叔父のお弁当を作る。

学校に出掛ける。

学校が終わったらそのまま食材の買い出しに行き、夕飯を作る。


休日の場合は、これに洗濯と掃除がプラス。



夕飯の後片付けが終わったら、出勤。

叔母の店に。

着くのはいつも、20時前くらいだったか…



コックがいて、ウエイトレスがいて、いつもニンニクとトマトのいい匂いがしていた。

当初はまだ、叔母の店にはそれなりにお客さんがいたと思う。







でも気がつけばいつの間にか、表の看板から「イタリア家庭料理」の文字が消えていた。

最初から「イタリア家庭料理?」って感じではあったけど…


内装は変わり、コックもいなくなって、ツマミ程度の料理を、叔母が作って出す程度になった。


可愛らしい唐辛子やパスタの瓶、トマトソースの缶が並んでいた棚には、酒瓶とカラオケのリモコンが置かれる様になった。



最初の頃に居た男性店員は全て辞めてしまい、若いバイトの女の子ばかりになった。


当初はウエイトレスらしい制服もあったのに、いつの間にか廃止されて、私服接客。

なかなか続く子がいなくて、すぐに辞めて行く。


新しい子が入るまでの繋ぎに、私が接客をさせられる。

表に人が足りる様になれば、厨房で料理を作ったり洗い物をしたり。


夜中の12時まで、それは続いた。

帰って宿題をするのは、それから。



中学生がそんな店で夜遅くまで働いていても、私が知る限りでは、悪評は大して立っていなかった。

家の手伝いという名目で、守られていたからだろうか。


遅くまでエラいねぇと酔っ払いに太腿を撫でられながら、私は中学卒業までそんな生活を送った。

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