07-4
真夏なのに長湯し過ぎて、脱衣所にあがるとホテルに着いた時より汗だくだった。
置いてあったドライヤーで裸のまま髪を乾かしたら、更に汗だくになった。
普通は、髪の毛を乾かしてから出るものなのかどうか…
それすら分からなくて、つい普段通りにそうした。
そしてそこまでして、私は初めて気が付いた。
バスルームに、着替えを持って来なかったことに…
せっかく着替えまで持って来たのに、それらはバッグに入ったまま。
さっきまで着ていたTシャツ達は、炎天下で2駅分自転車をこいできたから、汗まみれのはず。
これをまた着て、せっかくの日に、汗まみれのTシャツを脱がせてもらうなんてイヤだ…
どうしよう…
とりあえずバスタオルを巻いて、ドアを少し開いて顔だけ出した。
『悠人くん…』
「う~ん?」
『バッグ、取ってもらっていい?』
「いいけど、なんで?」
『着替え…お風呂場に持って来るの忘れたけん…』
「タオル巻いて来たらいいやん 笑」
何言ってんのこの人…
そんなドラマみたいなこと無理だから!
『恥ずかしいけん、いや』
「だってどうせまたすぐ脱ぐやん。電気暗くしちゃるけん、早く」
押し問答みたいなやり取りをしばらく繰り返した後、結局折れたのは私の方。
バスタオルをきつく巻いて、外れない様にグイグイ端を押し込んで、脱いだ服を抱えてバスルームを出た。
壁に沿う様に移動して、手探りでどうにかバッグの中に服をおさめた。
振り返ると悠人くんがこっちを見てるのが、暗いながらも雰囲気で分かった。
私は悠人くんの待つベッドに上がり、彼の正面に座った。
バスタオル1枚で。
せっかく悩んで選んだ下着は、全くの無意味だった。
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