06-5

それ以来、叔母の店が休みの日以外はちょこちょこ抜け出す様になった。


携帯なんて持ってなかったから、とにかく行ってみるしかない。

でも行けば、必ず悠人くんはいる。



私が夜でも頻繁に来る様になったから、誰も「家大丈夫なん?」と聞いて来なくなった。

悠人くんとは、更に仲良くなれた。


嫌なことは考えなくて済むし、いいことづくめだ。






だけど、計算が狂った。


ある日、抜け出そうとしているところを叔母に捕らえられた。

家の中のことが以前よりかなりおざなりになったことで、マークされていたらしい。


最初は気をつけていたのに、その日は確か、履いていったスニーカーを靴箱にしまうのを忘れていたんだ…。


もうしませんと、誓わされた。

でもそんな気は毛頭なかったし、数日ですぐ耐えられなくなった。



私は、悠人くんの言葉を思い出した。


家に居たくないから、あの溜まり場に住んでる。

たまに家には帰るけど、洗濯物を持って帰ったりするだけ。

寝泊まりはずっと、ここでしてるんだと。


溜まり場の家人も、何も言わないらしい。

誰がいつあの部屋にいるか、把握すらしてないかもしれないと言っていた。





───抜け出すのがだめなら、この家から出て行けばいい。───





後先なんて、全く考えていなかった。

嫌なことから逃げることしか、考えていなかった。


この家に来る時に持って来たあの大きなバッグに、着替えや宝物を詰め込んだ。

念の為、筆箱や教科書、制服も押し込んだ。

変なとこで真面目なのは、大人になった今でも変わってない。


叔母がいないのを事前にしっかり確認してから、バッグを抱えて悠人くんの元へ。


夏休みもあと半月ないくらいの頃だったか…私は初めて家出した。

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