06-3

「里菜どうしたと?!」



先輩の声に、みんながこっちを見た。



「夜遅いのダメなんやなかったと?」



悠人くんが立ち上がり、私の方に来た。



「門限大丈夫やと?」


『寝てから…抜け出して来た…』


「走って来たん?」


『うん…』



息があがっている私を、悠人くんが一瞬だけ…本当に一瞬だけ抱きしめて、背中をトントンとしてくれた。


走って来たから、髪の毛はグチャグチャ。

きっとたくさん、汗もかいてたはず。

普段ならきっと、気になってしょうがなかった。


でも今日はそれだけで、抜け出して来てよかったと思った。



「今から花火しに海行くけん、里菜も行くやろ?」


『うん!』



みんなに冷やかされながら笑って悠人くんと手を繋いで、みんなとぞろぞろ海まで歩いた。

コンビニで花火とライターと飲み物を買って、バケツを抱えて歌を歌いながら。


深夜に友達と遊んでるなんて、夢みたいだった。



ド田舎で、歩いてる人は私たち以外にいない。

街灯だってほとんどなくて真っ暗なのに、着いた海がキラキラして見えた。


それくらいに、ワクワクしていた。



砂浜を彩る、吹き上げ花火。

ロケット花火のパーンという音が、砂浜の静寂を切り裂く。



男の子達は調子に乗って、2つも3つも手持ち花火に火を点けて、持って走り回る。

それを見て、女の子達が手を叩いて笑う。


そこに自分がいることが、最初は不思議でしょうがなかった。

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