06. 初めての家出

06-1

悠人くんは、休みの日にカラオケやゲーセンに連れてってくれた。

何度かしか来たことがなかったから、本当にウキウキした。


悠人くんには、自分の生い立ちとかは言わなかった。

言えるわけない。



お小遣いがなかなか貰えないとだけは、話しておいたけど…


俺は働いとるとやけん、気にせんでいいよ。

そう言ってくれたけど、嬉しい反面、いつもいつも出してもらうのがずっと申し訳なかった。



あちこち行けなくてもいい…ただ、とにかく一緒にいたかった。

時間が限られていたからか、余計にその気持ちは強い。


だけど私は、居候の身。

夕方には帰って、叔母一家の夕飯の支度をしなきゃならない。



平日はお互い、学校と仕事があるから会えない。

休みの日だって、会っても明るいうちに帰らなきゃいけない。


帰り道に、同い年のカップルが楽しそうにゲーセンで遊んでるのを見かけたりすると、悲しくて、惨めで涙が出た。



そして、最初は優しかった悠人くんも、さすがに私の門限(と私は告げていた)の早さに不満を漏らす様になった。


このままじゃフラれてしまう…。

もっと自由に会える子に、悠人くんを取られてしまう。


だけど、お世話になっている叔母宅の家事を放り出すことが、私にはどうしても出来なかった。



なんで私は、普通の女の子が普通に楽しんでることが出来ないんだろう…

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