05-5

『なんで?』


「なんとなく」


『なんとなく…?』


「彼女、ずっとおらんっちゃんね俺」



誰でもいいってこと?



悠人くんのことは、好きだった。

一緒にいて楽だし、楽しかった。

だけど、恋愛感情なのかは分からなかった。



…はずなのに。



彼女になってくれと言われた瞬間に、舞い上がった。

急に、悠人くんを異性として意識した。

初めての感覚。


好きとか嫌いとか、恋愛がどうとかいうより、彼氏とか彼女とかいう言葉に、ただ憧れていたんだと思う。



『私でいいとやったら、なりたい』



ほぼ二つ返事で、そう言ってしまっていた。

なんとなく、なんて言われたのに。



「じゃあ今から、付き合うってことでいいと?」


『うん!』



付き合うって言葉の響きに、酔いしれた。



悠人くんが、私の彼氏になった。

私は、悠人くんの彼女になった。


彼氏かぁ。

彼女かぁ。


頭の中は、お花畑。


こんな感じを恋と呼んでいいなら、これが私の初恋だったと思う。



悠人くんと過ごす様になったことで、私は更に家に帰りたくないと思う様になった。

悠人くんは仕事のとき以外はいつもこの溜まり場にいたから、いつ家に帰ってるのか不思議だった。



そして、悠人くんがいつもここにいるなら、私も出来るだけ長い時間ここにいたいな、って思う様に…


最初はまだ家のこともそれなりにやっていたから、夕飯作るために家に戻らなきゃいけないのが、とても辛かった。



私、15歳。

悠人くんとはここから結局、6年近く付き合うことになる。

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