03-6

叔母が階段を上がる音がすると、紗弥加はチラリと私を見た。

その口元は、確かに笑っていた。



やっぱりな、と思った。


学校では一切、おかしな目には遭わないんだ。

家の中だけ。

紗弥加くらいしか、思い当たらなかった。



だけど分からないのは、その理由。

私のことが気に食わないのは、分かった。


でも、なんで?

私、言う通りにしたじゃん。

そのおかげであんた、ババアの干渉から逃れられて遊び放題、自由に出来てたよね?


なんで?

何も言わずに目を反らすと、紗弥加がボソリと言った。



「あんたなんか来んかったらよかったのに。出て行けばいいのに」




なんで?

言う通りにしたのに。

当時はそう思った。


未だに本当の理由は分からないままだけど…

きっと単純に、叔母が私を可愛がるのが面白くなかったんだろう。

それ以外に、思い当たらない。



家でたまに会うくらいだから、仲良くなることもない代わりに、仲が悪くなる様なきっかけもない。

一方的に嫌われたと思うしかなかった。


しかも、年頃の女の子が前髪を自分でめちゃくちゃに切って、その罪を被せられるほどまでに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る