03-5

いつも、社長出校の紗弥加。

普段は夜遅くまで遊びに行っていて、学校には昼から行ってる様子。


学年が違うから詳しいことは分からないけど、何度か担任らしき先生がうちに来ていたのを見たことがある。



そんな紗弥加が、珍しく平日に朝から起きて来た。

泣きながら居間に入って来て、右手で額を押さえている。

叔母がすぐに、紗弥加に声をかけた。




「どうしたとね?」


「起きて鏡見たら、こんなんなっとった…」




紗弥加が額から右手をどけたとき、私は思わず『うわ…』と声を上げた。


紗弥加の前髪が、額の半分もないくらいの長さでザックリ切られていた。

しかもそれはガタガタのめちゃくちゃで、明らかにハサミで、一気にジャキジャキいったんだろうという感じ。



「ガタガタやないね!どうしたと!?」


「分からん…起きたらこんなんなっとったっちゃん…」




そんなやり取りをする叔母と紗弥加を呆然と見ていると、叔母がキッとこっちを見た。

睨まれただけで、特に何も言わなかった。


だけど、疑われているのはすぐに分かった。

紗弥加が寝てる間に、おまえが切ったんだろう…って。



確かに最近、紗弥加とはあまり仲良くはしていなかったけど。

だからって、特に仲違いしてたわけでもない。

でも叔母にとっては、この家の中に疑う対象なんて、私以外には居なかったんだろう。




「学校どうするとね?」


「このまんまやと恥ずかしいけん、逆におでこ全部出して行く…お母さん、ピンある?」


「あるある!ちょっと持って来ちゃるけん、待っとき!」



叔母は私をジロリと一瞥してから、居間を出て行った。

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