03-4

そして、この一件を境に…だったか。

不可解な出来事が、定期的に起こる様になった。



ある日は、残り物の白ごはんがトイレの便器の中に、流されない状態のまま捨てられていた。

この家で一番少食な私が、まず疑われた。


食べきれないなら素直に言えばいいのに…叔母がそう呟いた。

そうなんだけど、言えない。

言えないから、無理やり押し込む。


だけど、残したいからって、トイレに流したりしたことはない。

けどもう、生理のあの一件で、すでに信じてもらうことを諦めてしまった私はただ、ごめんなさい…、とだけ呟いた。



またある日は、私の自転車に一番近いところにある小さな植木が、真っ二つに折られていた。

どう見たってあれは、人の力で故意にへし折ったとしか思えない。


だけどやっぱり叔母は、私が自転車を出し入れするときにぶつけたのだろう、と言ってきた。

ぶつけたならぶつけたで、何故すぐ言わないのか。


叔母が怒っているのは、そこ。

それにもやっぱり私は、ごめんなさいとしか言わなかった。

だって、私じゃありませんと言ったところで、誰が私を信じてくれる?



他にも、制服のスカーフがなくなって庭のポリバケツから見つかったり。

気に入っていたスニーカーの紐が、全部切られていたり。

教科書が、水をはった洗濯機にぶち込まれていたり。

大切にしてたたれぱんだのレターセットが、ビリビリに破られて引き出しの中にあったり。


本当に、いろいろあった。



たれぱんだの件はともかく、他はすぐに叔母にも見つかってしまう。

そうしたら、釈明をしなきゃならない。

その繰り返し。



誰がやっているなんて、私にはとうに分かっていた。

叔母だって、途中から本当は気づいてたんじゃないの?、と思ってしまう。


でも証拠がないから、糾弾も出来ないし。



私が出来ることといったら、スカーフを洗って干したり。

お小遣いもないから、スニーカーの紐を縫い合わせて繋げたり。

教科書をドライヤーで乾かしたり、レターセットをセロテープで繋げてみたり。


そして寝る前にひとりで少し泣いて、翌朝は何もなかった様な顔して学校に行く。

それだけ。



本当は誰がやったんだとか、いちいち調べるつもりはなかった。

だけどある日、犯人が自ら、私にそれを教えてくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る