02-3

こんな田舎だから、私が叔母の子供ではないのを周りはみんなおそらく知っていた。

だから最初は、それで後ろ指をさされたりもした。


だけどそのうち、私に関する悪い話は、ほとんど聞かない様になっていった。

何故なら、私が典型的ないい子ちゃんになったから。



紗弥加とのあのやり取りの効果があったのか、自分でもよく分からない。


ただ、中学生の私は絵に描いた様な優等生だった。


成績も良かったし、委員長に推薦された。

クラブ活動も頑張ったし、読書感想文で賞を獲ったりした。


ハキハキと挨拶をし、近所の人とも積極的に関わった。

地域活動にも参加した。


そうすれば、みんな私を笑顔で迎えてくれる。

必要としてくれる。



周りは、いとも簡単に掌を返した。


里菜ちゃんは、優秀。

自分の娘でもないのに里菜ちゃんをこんな風に育てた、ご夫婦は立派。


大きな声の立ち話にも、そんな言葉が飛び交う様になった。

人によっては、叔母の前で私に「立派やねぇ!」なんて言う人もいた。



幼少時代は陰気な子だとよく言われていた私は、この時期に世渡りについて学んだ。


笑顔でいれば、印象が良いこと。

学業さえきちんとやっていれば、多少の失敗は大目にみてもらえること。



腹の中でどんなことを考えていようが、愛想よく、要領よく振る舞った者の勝ちなんだ。


大人って、案外馬鹿ばっかりなんだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る