01-3
小学校高学年になると、母が家にちょくちょく帰って来る様になった。
だけどその時は必ず前もって連絡があって、何処かへ遊びに出るか、部屋から出ない様に言われる。
今思えばおそらく、男を連れ込んでいたんだけど。
そんな時私は、本を持って出かけた。
公園にはきっと、みんながいる。
こんな自分を見られたくないから、空き家の庭先や人気の無いアパートの階段、川辺の橋の下などに座って、暗くなるまで本を読んだ。
暗くなってから帰宅すると、大抵母はもう居ない。
仕事に出掛けていたと知ったのは、もう少し後のこと。
部屋の灯りが点いていないのを確認してから、鍵を開けて部屋に入ると、待っているのはテーブルの上のお金だけ。
私はまたそれを握りしめて、食べ物を買いに出かける。
小学校高学年にもなると、さすがに少しは知恵がついて、自炊の真似事をする様になった。
野菜を炒めたり、目玉焼きを作ったり…
米を買って来て、少しずつ炊いたりした。
この頃はまだ残り御飯を冷凍する知恵がなくて、茶碗に入れて冷蔵庫に入れていたな…
朝温めると、パサパサしてあまりおいしくなかったのを思い出す。
でも、そんなママゴトみたいな生活もやがて終わりを告げた。
ガスも電気も、止められてしまったから。
真っ暗な部屋に水風呂で過ごすこと数日。
叔母がやって来て、荷造りをしろと突然私に言い放った。
言われるままに自分の物だけを、誰の物かも分からない大きなバッグに必死に詰め込んだ。
自分の身体くらいありそうなバッグを抱えて、私は叔母の車に乗り込んだ。
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