第16話

「じゃあ、そこはもう飽くまでも食材に対してごめんなさいだね」



「そうだよ。そこは失敗された鶏と野菜たちに対してごめんなさいだよ。俺じゃなくね」




今度、同じ食材に会ったら謝っときなよ。許してくれるから。と、秀ちゃんは大真面目な顔で冗談のような、本気のようなことを言う。



きっと甘やかしたいと思う気持ちと、優しくするのは恥ずかしいと思う気持ちがせめぎ合っているんだろう。



若干、照れくさそう。



だけど、もうツンツンしてみせたって優しさは隠しきれてない。



失敗したっていつも残さず食べてくれるのを見てると尚更思う。




いつだったか同じように失敗した時にポロッと言ってたっけ。



一緒に食事をしている相手が俺って時点で嬉しいから別にその辺は何だっていいんだよ、って。



照れたようにそっぽを向きながら不貞腐れたような表情を浮かべて、小声で呟いてた。

 


結婚する前のことだったけど、秀ちゃんの中のその考えは未だに変わっていないんだろう。



機嫌が良さそうに笑っている秀ちゃんを見てるとそう思う。



何だかもう嬉しいや。


失敗しちゃったことに関しては申し訳ない気持ちでいっぱいだけど。

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