たいせつなのは愛の深さだよ。

第9話

「悪いけど、そんな言葉を言うつもりは更々ないから」




秀ちゃんはそう言って私の腕をグッと掴んで引き寄せた。



急に抱き寄せられた所為で「きゃっ……」と小さい叫び声が出る。




「何、今の声。計算か何か?」



「まさか、そんな……」



「だとしたら完璧だよね。 いちいち俺のことをドキドキさせてさ」




楽しい?趣味が悪いよ。と秀ちゃんは相変わらず早口でペラペラと私に捲し立てる。




「……ドキドキ?秀ちゃん私にドキドキしたの?」



そんなまさか。と思いつつ、つい気になってバカ正直に尋ねてしまう。



だって、信じられない。



秀ちゃんが私にドキドキするなんて。





「別に。 ただ言い間違えただけだし」



「言い間違いって何と?」



「だから俺はドキドキじゃなくてヒヤヒヤしたんだ。本当にそれだけ。 勝手な妄想ワールドを広げないでくれない?」




不機嫌そうに言い返しながら秀ちゃんの顔が少しずつ赤くなっていく。



視線は全く別の場所だ。



こちらは一切、見てくれない。




「もしかして秀ちゃんってかなりの照れ屋さんだったりする?」



「なんで?」



「顔が赤いから」




そうツッコんだ私に秀ちゃんは嫌そうに顔を顰めた。



聞かれたくなさそう。




「そんなことどうでもいいし。 彼女になるの? ならないの?」




強気に聞いてくるのに秀ちゃんの顔は少し不安げだ。



秀ちゃんって意外と顔に出るんだ?




そう思ったら何だか秀ちゃんが可愛く見えた。

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