第6話

そんなメルヘンチックなことを普通に楽しげに話す秀ちゃんにちょっとだけ驚く。



しかも、発想がちょっと可愛い。



いつも冷たいことを言ったりするけど、やっぱり秀ちゃんって温かい人なのかなと思った。




「うん。そう思ったら素敵だねっ」




素直な感想をヘラヘラ笑いながら述べた私に秀ちゃんも満足そうな笑みを返してくる。




うわぁ…。


秀ちゃんの満面の笑みなんて初めて見た。




ニコニコと機嫌が良さそうに笑う秀ちゃんは年相応の男の子だ。



ちょっと可愛いかも知れない。




「でしょ?動物の求愛だよね。キスって」




秀ちゃんは少しだけ首を傾げてそう言うと、私の両肩に手をポンと置いた。



同意を得るような目で見つめられてコクリと頷く。




「求愛?言われて見ればそうかも?」




求愛かぁ……。動物にも恋人とかいるのかな?




だとしたら素敵だよね。




そう思いながら視線を秀ちゃんに戻したら、秀ちゃんの顔が物凄くドアップで視界に映って驚いた。



近すぎ。




「へ…?」




そう口に出した瞬間にはもう唇は重なっていて。




「求愛…してみた」




なんて意地悪く笑われて心底ドキドキした。

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