第4話
嬉しくなった私は自分の鞄を掴んで秀ちゃんの隣に近寄った。
ヘラっと笑って「今日はありがとう!」と秀ちゃんにお礼を言う。
そしたら秀ちゃんは黙ってじっと私を見つめてきた。
目が合い、緊張。
2人の間に沈黙が流れる。
「秀ちゃん…?」
無言の空気に耐えられず、名前を呼んでコテンと首を傾げてみる。
何か変なことをしたか思い返してみたけど何も思い当たる節がない。
いったい、何だろう……。
訳も分からず困惑していると秀ちゃんは気まずそうに私から視線を逸らした。
「あのさ……」
口達者な秀ちゃんにしては珍しく口籠る。
言うか言わないか迷っている感じだ。
「何?」
続きを急かすように短く尋ね返す。
すると秀ちゃんは近くにあった机に鞄を置き、深く溜め息を吐いた。
気持ちを押さえるかのように髪の毛をくしゃっと掴んでいる。
「正直ありがとうとか、そんな言葉は要らないんだよね」
「……要らないの?」
「うん。だったらお礼はキスがいい」
「へっ?」
「って言ったらどうする?」
なんて困ることを言って、私に視線を向けた秀ちゃんに思わず顔が熱くなる。
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