にこにこ笑うなってば。

第3話

「やれば出来るなら、最初っからやれよって感じなんだけど」




秀ちゃんに教えて貰ってある程度は理解出来た私。



そんな私に秀ちゃんは溜め息を吐いてくる。



だけど、少しだけさっきよりも表情が柔らかい。



褒めてくれてるのかな?




「秀ちゃんの教え方が上手いからだよ?」




そう言って笑い掛けたら秀ちゃんは再びムッと眉を顰めた。



秀ちゃんのお陰だと言いたかったけど、何かいけなかったらしい。





「じゃあ、俺が教えなかったら梨子は何も覚えられないの? 1から10まで手取り足取り全部俺が教えなきゃいけないわけ?」




そう言って秀ちゃんは煩わしそうな視線を私に向けると、自分の鞄を掴んでイスから立ち上がった。



そのまま背中を向けて教室の扉に向かって歩いていく。




「待って。秀ちゃんっ……」



扉に手を掛ける秀ちゃんを慌てて呼び止める。



一緒に帰りたい。そんな気持ちで。




「何?」



「一緒に帰ろう」



「そんな小学生みたいなことをするの? 恥ずかしいにも程があるんだけど」




途端に秀ちゃんはこちらに背中を向けたまま、冷たい声で言葉を吐き捨てる。




でも、何だかんだ冷たいわりには勉強を教えてくれたり、待ってくれるんだから本当は優しいんだと思う。

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