第2話

夕暮れ時の教室。



そこにいるのは秀ちゃんと私だけ。



甘くなりそうなこの雰囲気で険悪なムードが漂っているのは、相手が秀ちゃんだからだろうか。




「さっきから聞いてる? また己の世界に入り込んでない? 」



「あわわ、ごめん」



「全く。そんなボケッとしてる余裕があるなら態々、俺が勉強を教えてあげる必要なんてなさそうだね」





さらに苛立ったように捲し立てる秀ちゃんに、泣きそうになりながら慌てて頭を下げる。


  


やばい。これ以上秀ちゃんを怒らせたら本当に教えてくれなくなっちゃう。



そうなったら終わりだ。



本気で留年しかねない。




「もういい。謝っている暇があるならさっさと手を動かす。 無駄なことに時間を使わないでくれる?」




顔を引き攣らせた私に秀ちゃんは鬱陶しそうな視線を向けてくる。




本当に秀ちゃんはいつも私に対して冷たい。




いや、誰に対してもこんな感じだけど、私に対しては特に冷たい気がする。



それがいつも寂しい。




「……うん」




それでも何も言い返すことは出来なくて。


私は小さく頷きながら秀ちゃんに怒られないようにシャーペンをノートに向けた。

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