第12話

ある時は高層ビルのhotelの一室で、

宝石箱のように煌めく夜景を見ながらwineを飲んで語り合ったこともあった。



「泰生、あなたって随分かっこつけなのね」



そう言いながら彼女もしっかり雰囲気に合わせてイブニングドレスを着ていた。




「愛してるわ泰生」




あれが唯一聞いた告白である。

雰囲気に飲まれて言っただけなのだろうか。



それからほんの少ししてお互いを知り始めた頃、

彼女のほんの些細な言葉から私たちの関係に終わりがくる。




「泰生。あなたはわたしとお金とどっちが大切なの?

あなたはいつも仕事があると言ってわたしを置き去りにしていくわ。

あなたを四六時中独占したいなんて言わない。せめてわたしといるときくらいはわたしだけを見て」




口論になった。

私は私の唯一持ち得たものを否定されたような気分になったのだ。



「君は私を、私の経済力を歌い手としてのステップアップに利用しようとしてるんじゃないのか?」

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