私はかぼちゃ
第46話
今日は仕事の最終日。
私は朝早く起き、メイクに時間をかけた。
額のあざは、コンシーラーで厚塗りし、前髪を厚めに垂らし隠した。
足の打撲は、40デニールのタイツでごまかした。
これで今日1日、乗り切ろう……。
私は制服に着替え、マスターと朝食を取るために、下の部屋に向かった。
階段を降りながら、キッチンの方に目をやると、
テーブルの上には、朝食が準備され、マスターはまだ眠いのか、うつ伏せになり、座って寝ていた。
私は、静かに近づき、小さな声でマスターに話しかけた。
「おはようございます」
「弥生さん、おはよう……ご…」
マスターはゆっくり顔をあげ、私を見るなり固まった。
「やっぱり化粧、変ですか?キズ隠したから、濃いですよね?」
私は、手鏡で自分の顔を確認した。
「いや、、、、美容部員の弥生さんが……ここに……いるのが不思議で……夢かと思いました」
「あぁ、毎日すっぴんでしたもんね……別人ですみません」
「そう言うことではなく、どちらの弥生さんも……綺麗です」
マスターの言葉に、ちょっぴりドキッとしたけど、お世辞だと思って、私は面白おかしく、言葉を返した。
「こんな腫れた顔が綺麗だなんて、お世辞ありがとうございます……フランケンに似てません?」
「お世辞ではありません。僕にはまだ、冗談を言う余裕なんてないですから……」
マスターは笑いもせず、真面目な顔でボソッと呟いた。
私は丸顔だから、『笑顔が可愛い』ぐらいは言われた事はあるが、『綺麗』は初めてで、嬉しいような、恥ずかしいような……
どんな返しをすればいいのか、分からなくなり、無言になった。
静まり返る空間。
マスターもこれはまずいと思ったのか、マスターの方から話し始めた。
「こ、これ、チロルで使っているパンと、同じなんですよ。パン屋さんから仕入れています」
「やっぱりそうなんだぁ――。柔らかくて美味しいですよね」
「弥生さん、お仕事は何時からですか?」
「10時からです」
マスターは、上を見たり、下を見たり、目を合わせる事はないけど、一生懸命会話をしようと努力し、会話のキャッチボールを続けた。
「家は何時に出ますか?」
「薬を飲むんで、バスで行きます。だから、8時40分には家を出ます」
私の、この返答を聞いた瞬間、マスターの顔色が変わった。
「えっ、8時40分?――――ほんとですか?おばさん用事あって、今いないんです。9時には戻ると言っていましたが、薬塗るの……どうしよう」
マスターは、慌てふためいていた。
南さんの代わりに、私の手当をするのが、恥ずかしいんだと、私は察した。
私も、正直それは恥ずかしい。
だから私は、やんわり断った。
「1日ぐらい、薬は塗らなくて大丈夫ですよ。ご馳走様でした」
私は先に食べ終わり、自分が使った食器を洗っていた。
その時、マスターの様子を陰から見てみると、いつまでもパンをかじっていて、何かをボーっと考えているようだった。
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