第23話

少し待つと、南さんが慌てた様子で私の前に現れた。



「弥生ちゃん、怪我したんだって、おばちゃんに見せて」



「すみません、夜分遅くに……」



私は、南さんに手を引かれ、吹き抜けの階段を登り、2階の部屋に案内された。



その部屋は、花柄のカーテンに、ふぁふぁのラグマット、小さなテレビや机、へたれてないピースクッション。全てが新しくて、可愛い部屋だった。



私がラグマットの上に座ると、


南さんは救急箱を開け、額のこぶや、爪、唇の怪我の手当をしてくれた。



「弥生ちゃん、嫌かも知れないけど、服脱いでもらえる?」



「えっ……はい」



私は下着姿になった。



腕と足には、複数の大きな打撲が広がり、首回りにはシャツで擦れた傷跡が、水脹れになり腫れ上がっていた。



自分でも気づかなかった怪我を見て、私は驚いた。



「弥生ちゃん、何があったの?」



私は下を向き、なんて言い訳しようか考えたが、緊張と動揺で頭の中が真っ白になった。



「えーと、、、あの」



あきらはね、訳あって今は料理人だけど、本当は医師なのよ。弥生ちゃんの怪我見た時、不自然だって思ったみたい」



「えっ、、、」



嘘を見抜かれていた。



「すみません、心配をかけたくなくて嘘つきました」



私は、声を震わせながら、今日あった出来事を話した。



南さんは私を抱きしめて、



「怖かったね、辛かったね」



と背中をさすってくれた。




溜まりに溜まった不安と恐怖が、涙となって流れ落ちた。



「暴力を振るう人は、また繰り返す。少しの間、身を隠した方がいいわ」



南さんはそう言って、私の頭を撫でた。

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