第16話
やっと自分のアパートに着き、鏡の前に立った。
恐る恐る電気を付けると、そこには別人のような自分がいた。
髪はバサバサで目は真っ赤。左側の額にたんこぶができていた。
唇は切れて血が滲み、
右の爪は皮膚から剥がれ、そりかえっていた。
「痛い……」
病院を調べようと、痛みで麻痺した指で、携帯の電源を入れると、
携帯電話には、彼からの着信履歴が並んであった。
そしてメッセージには、
『ごめん、許して。忘れたスニーカー、届けに行っていい?明日、一緒に出かけないの?会いたいよ』と……。
彼の『ごめん』の言葉に心が揺らぐ。
今までも、そうやって情にながされ、彼を許してきた。
1回目は、些細な喧嘩でキレて、部屋の物を片っ端から投げ飛ばし、テレビやステレオを壊した。
2回目は、私の親が原因で、親戚のお兄ちゃんと喧嘩し、お兄ちゃんを殴った。
その度に、私は別れを切り出すが、
彼が土下座して謝るので、結局私は彼を許してきた。
そして3回目は、私が殴られるなんて、思っても見なかった。
指も、身体も心も痛い。
悔しくて、悲しくて、好きな気持ちと、怖い気持ちがぶつかり合う。死にたい……
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