第7話

中に入ると、ドアにぶら下がっているベルが、カランコロンと鳴って、



足を引きずった、バイトのおじさんが声をかけてくれた。



「お好きな席へどうぞ!」



辺りを見渡すと、若い女性客が多く、みんな笑顔で美味しそうに料理を食べている。



私達は、窓側の席に着くと、さっきのおじさんを呼び、



メニューも見ずに、1番人気の『あさりスパゲティ』を注文した。



少しでも沢山の、恋バナをしたかったからだ。



そして直美は、すぐさま、身を乗り出し、私の気になっている、彼の話を聞いてきた。



「ねぇ、彼はどんな人?」



三上満みかみみつるって名前で、3歳年上。髪は茶髪で、斜に構える感じがカッコいい」



「へぇ〜写真ないの?」



「あるよ。これ」



私はスマホの画像を見せた。



「ほんと、イケメン。ほり深くて、ハーフみたい」



直美に褒められ、私がニヤニヤしていると、



マスターが『あさりスパゲティ』をテーブルの上に置いた。



目を合わせず、ボソボソと何か言い、すぐ去って行った。



たぶん、『お待たせいたしました』と言ったのだろうが、そのか細い声は、周りの音にかき消された。



そんな、おどおどしているマスターを見て、直美が言った。



「あの人が例の?」



私がニャッと笑い、頷くと、



「えっ――!あんなおとなしい、おじさんが?強いの?」



と、ゲラゲラ笑い出した。



私は、聞こえるんじゃないかと焦り、



「……今は話しちゃダメ」



と、小声で直美を注意をした。

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