第173話

ナンちゃんとみるくは牧場の作業用のKトラに乗り込んだ。



「ジローくん!行ってくるね!」

みるくが窓を開けて手を振った先には、珍しく作業服に身を包んだジローがいて。

ジローは頭にタオルを巻いて、照れ臭そうに手を振り返した。




「ジロー、あたしの代わりにしっかり働くのよ!」



「おう。」



ジローは、今日はナンちゃんの代わりに牧場の仕事を手伝うのだ。



ジローは返事をするとすぐ早足で牧場の牛舎の方へ駆けていった。




ナンちゃんはKトラを発進させ牧場を後にした。


「あ!」

みるくは助手席から窓の外を見て声をあげた。


「何よみるく。」



「あ…ううん。何でもない。」



ナンちゃんは首を傾げた。

みるくの見つめる窓の外には、牧場の草原に立ちすくむジローがいたのだった。

あ…

みるくが…

以前なら去り行く背中を見ていたのはみるくだった。だが今、寂しそうに草原の中でこちらを見ているのは、ジローだ。




みるくはいつも、この場所で自分を見ていた。

ジローは草集めの熊手を両手で動かしながら、去り行くKトラを遠目に見ていた。

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