第65話

「確か、須田さん、お母ちゃんの店にツケがたまってたよね?」


女の子はニヤッと笑って男の目を見た。

男はギクッと身を震わせる。



「今ここでツケの代金十万払うんだったら、痴漢見逃してやってもいいよ。安いもんでしょ、営業停止に比べれば。」



男は頭を掻きながらすぐにポケットの財布に手をかけた。








お札十枚を団扇のようにして仰ぐ女の子を背に、男は悔しそうに去っていった。



「どんなもんよ。」



女の子は太陽のように燦々と笑った。


薄暗い路地裏に差し込んだ陽光に、

みるくは彼女につられてすっかり安心し、笑顔をみせた。


「助けてくれてありがとう。」



「どういたしまして。お蔭で臨時収入もあったし、うちは万々歳。」



女の子はみるくにピースマークをつくって見せた。

みるくはほっとしたのか涙が込み上げてきて、女の子の胸に飛び込んだ。


「怖かったよぉ。」


「よしよし。怖かったね。」



みるくより背の高い女の子は、まるで親のようにみるくを抱きしめた。

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