第56話
みるくは坊主のその言葉に首を傾げた。
「世間にも家族にも、愛する人にさえ見放された人間が行き着く所といえば、夜でも眩しく輝くネオンの彩りの世界くらいですよ。」
坊主は微笑を浮かべて言った。
そして、すっかり抜け殻のようになったみるくの手を引き、牧場の出入り口に向かった。
「こんなこともあろうかと、今日はコレに乗ってきたんですよ。」
スクーターがあった。
坊主はこころなく陽気に口笛を吹き、みるくをスクーターに乗せて牧場を出た。
「しっかり捕まっていてくださいね。ここら辺、坂やら曲がりくねった道やら沢山あって危ないですから。」
坊主の背中で、
みるくはその空虚な瞳に、どんどん小さくなっていく牧場の姿を映していた。
牛のみるくがいつもジローの帰りを待っていた放牧も、ジローに餌をもらった牛小屋も、ジローの家も、やがて森に隠れて見えなくなった。
不安が心に拡がっていった。
牧場にもらわれてきて以来、この周辺の地域から出たことは一度もなかった。
いったいどこに行くんだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます