第56話

みるくは坊主のその言葉に首を傾げた。




「世間にも家族にも、愛する人にさえ見放された人間が行き着く所といえば、夜でも眩しく輝くネオンの彩りの世界くらいですよ。」




坊主は微笑を浮かべて言った。



そして、すっかり抜け殻のようになったみるくの手を引き、牧場の出入り口に向かった。



「こんなこともあろうかと、今日はコレに乗ってきたんですよ。」




スクーターがあった。


坊主はこころなく陽気に口笛を吹き、みるくをスクーターに乗せて牧場を出た。



「しっかり捕まっていてくださいね。ここら辺、坂やら曲がりくねった道やら沢山あって危ないですから。」




坊主の背中で、

みるくはその空虚な瞳に、どんどん小さくなっていく牧場の姿を映していた。

牛のみるくがいつもジローの帰りを待っていた放牧も、ジローに餌をもらった牛小屋も、ジローの家も、やがて森に隠れて見えなくなった。




不安が心に拡がっていった。




牧場にもらわれてきて以来、この周辺の地域から出たことは一度もなかった。




いったいどこに行くんだろう。

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