第52話

ナンちゃんはみるくに申し訳なさそうに目配せしたが、次にはさらに声を張り上げて言ったのだ。



「それとこれとは別よ!だって、親父さん、家にそんな大金出せる余裕があると思ってるの?牧場を維持するのだって莫大な費用がかかるって言うのに、そんな得体の知れないことに大金出す余裕なんかないわ!判ってるでしょう?」




「…ああ。」




親父は言い返せずに口をつぐんだ。



坊主はため息を吐いて、

「じゃあいったい誰が払ってくれるんで?」



ナンちゃんは何の躊躇いもなく答えた。

「あの娘自身に払ってもらうしかないわ。」




みるくはおどおどして、すがるようにジローの腕にしがみついた。




すると坊主は、

「まぁ、私は金さえ頂ければどうでもいいんですけど。」


そう言い放つとおもむろにみるくの眼前に請求書を差し出した。


「さぁ、みるくさん。その無力な身の上で百万という大金をどう支払ってくれるんです?」



坊主の口元がニヤニヤしていた。みるくが追い詰められて苦しむ様を愉しんでいるのだ。


みるくは冷たい汗が額から流れ落ちるのを感じた。

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