第53話

みるくはすがる瞳で愛する人の名前を呼んだ。


「ジローくん。」


みるくの小さな肩が小刻みに震えている。



だが、ジローはみるくを助けることはなかった。


「わりぃけど、お前一人でなんとかしろよ。」



ジローはしがみつくみるくの腕をほどいた。



みるくは体の支えがなくなり、無気力に崩れ堕ち、地面に膝をついた。


ドクドク鳴る心臓の奥で、冷たい暗闇がざわめきだす。




…みるくは、ジローくんの彼女になるために人間になったのに。




ジローくんなら、みるくを助けてくれるって思ってた…





あまりのことで涙も出ない。




ジローはみるくに背を向けて言った。



「お前が選んだんなら、お前が自分一人で背負え。」

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