第31話

ジローはキレた。



「気持ち悪いんだよボケジジィが」



ジローは血走った目で、親父の背にある壁を力いっぱいぶん殴ると、みるくをおいて、一人2階の自分の部屋へ上がっていってしまった。









「親父さん!

なんであの子の気持ちを逆撫でするようなこと言うんですか?

わざわざあの子の母親の服だなんて言わなくたって、他に言い方はあったでしょう?」


台所で一部始終を見ていたナンちゃんが、親父に言った。



「この服がジローの母親の物だっていうのは本当のことなんだから、別に隠すこともないだろうよ」



「本当のことだからって何でも言っていいんですか?

今まで服がジローの目に触れないようにタンスの奥にしまってたのは誰です!?」



「・・・彼女ができたんだし、もう、母親のことで傷ついたりしないと思ったんだよ・・・

まだ、早かったか。」



親父はやれやれといったふうにため息を吐くと、腰を下ろし煙草を吸いはじめた。



「あの子はまだ子供なんですから」


ナンちゃんは親父の前に灰皿を置き、お盆から湯飲みを三つ、ちゃぶ台の上に並べた。

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