第2章 居場所
心の波
第52話
12月24日……私は引っ越した。
前日に侑くんがきた時は、引越しがバレるんじゃないかとドキドキしが、
あの日、彼といたあの部屋だけが、まだ片付けが終わって無くて、
彼に気づかれる事無く、引っ越しも無事終わり、私は今、新幹線で引越し先に向かっていた。
次の引っ越し先は、おばさんの家で、私は住み込みで、おばさんの世話をする事になっていた。
おばさんは、母のお姉さんで現在80歳。
息子の博治さんは、5年前に札幌に移り住み、そこで会社経営していてる。
だからおばさんは一人暮らし。
もちろんおばさんの事は心配で、何度も札幌に住まわせようとして来たが、おばさんはこの町から離れたく無いと言い、今に至る。
しかし高齢になり、雪かきや買い物も大変だし、最近は、詐欺や強盗のニュースもよく耳にし、
心配になった博治さんが、私に一緒に住んでもらえないかと、お願いしてきたのだ。
たぶんおばさんが、私を可哀想に思い、博治さんに頼んだと私は察していた。
仕事内容は、ディサービスに送り出したり、病院への付き添いや、食事のお世話を頼まれた。
お給料が出て、しかも家賃、光熱費、食事代はタダ。
住まいは、駅近くで、スーパーも病院も徒歩圏内。最高の立地だった。
「みやこおばちゃん、今日からお世話になるね」
私が話しかけると、おばさんは、コタツの布団を捲り上げた。
「沙也加さん、寒ぐねぇがぁ?まんず、あったまれ」
「ありがとう。お土産買って来た。一緒に食べよう」
私は、お土産の味噌饅頭を出し、おばさんと、おしゃべりしながら食べた。
「おばさん、夜ご飯、もうそろそろ作っていい?」
「いや、私がやる。沙也加さんは、今来たばかりで疲れただろうから、部屋で体を休めなさい」
「荷物は明日届くし、疲れてないから私がやります」
息子さんの話だと、おばさんは最近少し物忘れが見られて、火の始末が心配だと言っていた。
それで『宅配キット』と言う、ガスでもレンジでも作れる、1日分の食材が毎日届く。
今日は、カットされた野菜と挽肉と豆腐、惣菜、調味料、ショートケーキまで入っていた。
私はイラスト入りのレシピを見て、
豆腐をぐちゃぐちゃにかき混ぜ、それに、ごま油で炒めた、茄子と挽肉と、甘辛いタレを入れ炒めた。
「美味しそうな香りがするなぁ」
おばさんは台所に顔を出し、出来上がったおかずをテーブルに運んでくれた。
誰かと食べる食事は、やっぱり楽しくて美味しかった。
「おばさん、宅配キットにケーキが付くなんて豪勢だね」
「今日はクリスマスだから、特別なだげだ」
「そうだった。今日はクリスマスだったね」
その時、携帯電話が鳴り、画面を覗くと、
✉️『Merry Xmas。マフラーいつ返しに行けば良いですか?』
と、彼からメールが届いていた。
私は、心で『お誕生日、おめでとう』と呟き、返事は返さなかった。
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