第53話
おばさんが、ディサービスで家にいない日は、単発のアルバイトをした。
家が駅近くにあるおかげで、仕事にすぐ行けて、おばさんが帰ってくる頃には家に戻って来れた。
単発の仕事もなかなか楽しい。
毎回、初対面の人と仕事をするので、深く仲良くならないし、隙間時間で稼げるから、私には都合が良かった。
そんな充実した日々を過ごし、1ヶ月経った頃、おばさんに変化が見られた。
「財布がいない」
おばさんがそう話すので、家の中を慌てて探したのだが、全く見当たらない。
いつもどこに置いているのか私には分からないから、報告も兼ねて博治さんに電話をかけた。
博治さんはすぐ電話に出てくれ、心当たりのある場所をいくつか教えてくれた。
そして財布は見つかった。
たまたま忘れたのだろう……
その時はそう思ったが、
それからも、何度もおばさんは、「物が無くなった」と言った。
そしてある日の夜、夜中の12時に玄関の扉が開く音がし、
泥棒かと思い、私は静かに2階から下に降りた。
玄関は真っ暗なんだけど、すりガラスから外で蠢く光が見える。
私がそっとを扉を開けると、
そこには懐中電灯を持って、辺りを照らしているおばさんがいた。
「おばさん、どうしたの?」
「財布を落としたかも知れない……」
3月はまだ雪もあり、外は寒いのに、おばさんは上着も羽織らず、財布を探していた。
もちろん財布は、別の場所にあった。
おばさんはしっかりしているようだが、時々記憶が飛んでしまうようだ。
それで博治さんにその事を話すと、3日後、飛行機と新幹線を乗り継いで、博治さんはこの家にやって来た。
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