第43話
息子が亡くなって1ヶ月が経ち、私は、仏壇にお供えするお菓子を買いに、スーパーに行った。
そのスーパーは、私の住む町から、車で30分の場所にあって、誰にも会わないと思い、そこを選んだ。
なのに運悪く、知り合いに会ってしまった。
知り合いは私に声をかけ、
私は会釈をし、その場から立ち去ろうとした。
しかし、知り合いは、
「今日は息子さん、一緒じゃないの?」
と話を続けた。
彼女は息子の死を知らなくて、ごく普通に、日常会話として話しただけで、
もちろん、悪気はない。
だから私は、なんて答えたらいいのか悩みながらも、
「一緒じゃないよ……」
と、誤魔化した。
それでも話は終わらず、質問が繰り返される。
「何歳になった?」
「……じゅう……さ……ん」
「もう13歳になったのね。そう言えば、ニュースで見たけど、そっちの地域で、13歳の子が亡くなっちゃったね……」
その言葉に、私の目から、涙がこぼれ落ちた。
涙は出ているのに、顔は必死に笑おうとし、私の顔はぐちゃぐちゃになった。
知り合いは、私のその顔を見て驚き、
『ごめんなさい』と謝り、去って行った。
悪いのは泣いた私なのに……
その時私は気がついた。
私はもう、今まで通り、普通に生活できないんだと。
息子の死を知っている人は、私に気を使い、話しかけ辛いだろうし、
息子の死を知らずに、息子の話をした人は、後から知って、悔やむだろう。
私と会う事で、みんなが悲しい気分になるし、私もみんなと会うと、無理して笑うから、顔が疲れる。
誰かに会うのが嫌になり、私は引きこもりになった。
長い間休んだ会社も、挨拶なく辞めた。
心配してくれた、友達との連絡を絶った。
電話番号もアドレスも変えた。
私は礼儀の知らない、最低の女に変貌し、みんなの前から
……逃げた。
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