自死遺族

第42話

私には、子供がいた。 



名前は侑輝ゆうき



優しくて、純粋で、小学校までは、買い物も、ランチも、カラオケも、友達親子のように、一緒に行った。



でも、中学に入ってから、何かが変わっていった。



私と仲良くすると、『マザコン』とバカにされるらしく、私との距離を取り始め、会話も無くなり、私は息子とコミニュケーションが取れなくなった。



細くて、弱くて、女の子みたいな息子は、部活の先輩達のパシリにされ、それがエスカレートし、お金も要求されるようになった。



味方をしてくれていた同級生も、先輩の目が怖くて、だんだん息子から離れていった。



陰口を言われ、笑われ、恥ずかしい目に遭わされ、味方のいない息子は、ネットの中に救いを求め、目に見えない、架空の世界にのめり込んだ。



ネットの中には、自分と同じ、弱い者達が集まり、悩みを打ち明け、慰め合い、


時にはアニメやゲームの趣味の話で盛り上がり、息子にとって、パソコンの中の人達が、親友だった。



しかし、見えない世界の人間なんて、ほとんどが嘘まみれで、仲間のふりして近寄って、息子を死に追いやった。



掲示板の中には、自ら死ぬ事は良いことで、死んだ方が、自分のためになるような内容が、溢れていて、



『死んだ方が楽』


『生きてたって、苦しいだけ』


『芸能人だって自殺したから、死は怖くない』



そんなひどい会話が、飛び交っていた。




そして息子が死んだ後、一緒に死のうと書き込んでた奴らは、まだ生きていて、連絡の途絶えた息子の事を、



『マジ、死んでたりして』


『ウケる』


と書き込み、笑いのネタにしていた。



まだ人生経験のない息子は、嘘か真かを見抜けず、ゲーム感覚で、人生を終わらせた。



死んだことがない人間が、軽々しく死んだ方が楽だと話す闇の世界。



死んだ方が楽ってなに?あなたは、一度『死』を経験してるの?



あなたに何がわかるの?



やり場のない、怒りと悲しみが、私の心を蝕んだ。




――葬儀の日、外から家に入る間際、小雨が降り始め、遺影が濡れぬよう急いで玄関に入った。



そして雨に濡れてないか、その遺影を見ると、息子の右目の部分に一粒の雨粒が落ちていて、下へと流れる様子は、まるで息子が泣いているように見えた。



息子は死を後悔しているのだと、私は思った。

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